身体教育・身体文化

 

人間は「こころ」や「からだ」、「環境」に関する問題は直感でわかっていることが多いです。なぜかわからないけれど自分ではおかしいとわかっている「こころ」の問題、「からだ」の問題についてはそれぞれの医者・指導者とのコミュニュケーションが求められます。「環境」に関しても、産業化・自動化・情報化が進もうとも人間は直感で本質的な問題を理解しながらもどうしていいかわからないというケースが多いです。従って自動化がいかに進もうとも「古いものの良さ・本質の発見」・「たまには歩いた方がいい」・「ディスプレイをみないほうがいい」・「風力発電をしてみよう」(風力発電はデンマーク人の体操家によって発明されました。)といった答を日常的な解答から産業形態まで発想・解決案を産み出すことが出来ます。このような諸問題系に関しては問題解決の為のワークグループのみならず、その周囲とのコミュニュケーションのネットワークの構築が意味を持ちます。双方向なメディアが実現している現在、「情報」は人間が比較的問題発見・解決を行いやすい問題領域です。現在は「情報」系のなかの「振り付けソフト」の研究開発が主流ですが、いずれは「こころ」・「からだ」・「環境」といった問題についてもアプローチをすることが重要になるでしょう。ダンサーや舞踊研究者は<好きだからやっている>という人が多いです。けれども自分が「なぜ舞踊なのか?」「舞踊研究なのか?」という根元的な問いを考えながらも周囲の領域・社会の中での異なった生活・仕事をしている人とのコミュニュケーションを行う必要があります。これらの問いに対して、ダンサーや舞踊研究者はエクスサイズからセラピー、工学・芸術的な知識まで様々なコミットメントを行うことが出来ます。それらを通じて「身体観」・「運動観」、「情報」・「自動化」、「環境」といったキーワードを考えることが可能になるのです。また現在あるコンピュータ(第4世代コンピュータ)以後のコンピュータを考える事・新しいコンピューティングを考える事につながります。ロボット(サイボーグやアンドロイド)の開発、クローニング・ゲノムによる身体の操作は直接的・間接的にダンスや身体・運動といった概念と関連をしてきます。(最近ではロボットの動きをデザインするロボット・モーション・デザインという言葉も生まれてきました。)従って単にからだを動かすのではなくその意義や社会的な意味合いを同時に考えていくことは大きな意義を持つようになります。(脚注2)

ダンスという媒体を通じて、現在私たちが「伝統」として受け継いできている身体教育・身体文化(スポーツ)の構成要素を、21世紀を生きる事を通じ、お互いに立場を超えた議論をすることで<再プログラム>する、ないしはその方向性を模索することが可能なはずです。新しい身体教育・身体文化の在り方をエスキースしていくことは自ずから21世紀の社会にも深い影響をあたえていくことでしょう。