脚注2

「学生に単にダンスを教えているだけ、幾ら教えても砂漠に水を撒くような状態、結局は何も変わらないという絶望感」から抜けることも可能です。実際にエクスサイズを考え教えることは人々の「からだ」のみならず「こころ」に影響を与えていくことです。またダンスそのものとそれをとりまく環境・学問領域にについて知ることは自分がやっていることを通じて周囲とどう関わり周囲に貢献していくのかということを知ることにもなります。「砂漠に水を撒く事への絶望」から自分の小さな世界に篭ってしまうのではなく、砂漠だからこそそこに水をもたらすことが必要なのです。

同時にダンスはアートのみならず「こころ」と「からだ」両方に影響を与えることができるスポーツです。「こころ」を対象にしたものとしてはダンス・セラピーという手法が生まれていますし、「からだ」を対象にしたものとしては、ボディ・アライメント(解剖学など)やボディ・コンディショニングといった手法があります。日本の教育では「リラックス」を教えないということがいわれています。今現在ある体育・保健の考え方ではからだを動かせば「考えなくていい」、「すっきりする」という段階のリラックスに対する見識が多いです。またリラックスした結果として清潔・さっぱりとすることは、集団の規律=訓練と結び付きイデオロギーを伴って語られます。しかし「リラックス」するとはいろいろなものからとらわれなくなる、過去の因習にとらわれなくするといった社会や個人の新しい<創造性>とも結び付くより深い意味を持っています。つまりその意義は体育・保健という領域内のみではないのです。高度に発達した現代社会の日常から自分自身が「わからなくなっている」「出来なくなっている」「おかしくなっている」事柄を見つめ直す大きなきっかけにもなります。「清潔」、「健康」といった概念も規律=訓練のためではなく個人のものであって欲しいです。

ダンスを教える指導者にとって単に実技中心のエクスサイズを教えるのみではなく、その意味や効果を考えることが必要な時代になっているように思えます。