ダンスを学ぶ男性・男性舞踊手に知っておいてほしいこと
オープンクラスでのトラブルから亡くなった東京小牧バレエ団の三橋まり子さんに追悼の意を表明します。
吉田悠樹彦
このトラブルはオープンクラスで教えていた男性が三橋さんに惚れたということからはじまり最後は三橋さんが殺害されるという悲しい顛末を向かえました(2002年3月)。理由の如何にかかわらずとても悲しい事件だと思います。
このニュースを聞いたときに男性ダンサー及びダンスを学ぶ男性はますます信頼を失い受け入れてくれるスタジオを失うだろうなと思いました。従ってダンスを学ぶ男性が心得いて置いてほしいことをこのページでまとめました。
男性の意識の向上を願います。
ダンスを学ぶ人・教える人は圧倒的に女性が多いです。従ってダンスを習う男性に対する偏見は同性からも非常に強いもので、時には逆セクハラのようにひどいことをいわれる事があります。女性の側から「誰か気に入った女の子はみつかった?」「きれいなものが好きなのか、きれいな女が好きなのか?」といった剛速球を投げられることも多いときいています。例えば男性がダンスを学ぶためにまず出会う問題は受け入れてくる教室そのものが少ないという事です。都心は人と情報があり違いますが、地方に行くと絶望的です。私自身1地域にあるダンススタジオに電話をかけて全滅をしてしまったという経験を持っています。経験上ダンススタジオは電話で問い合わせるとほとんど断られるので、自分で時間を調べてその場にいって怪しいものではないという事を表明する必要があります。しかしスタジオでさえイタズラ電話やおかしな男性が入ってくる事も多くそれが信頼を失う原因になります。もしトラブルが起きたときにお教室の教え子は辞めてしまいますし場合によっては指導者も辞めてしまう可能性があります。あるダンス教室のホームページには「盗撮は明確な犯罪行為である」と書いてありました。そこの先生は嫌な思いをしたことがあるようです。私があるバレエスタジオに通っていたときも「最近は女性がやるからね」ということを同じスタジオにいた主婦からいわれた事があります。
以下にあげていくことは私の経験則・周りから言われた情報です。同性として認知と理解を深めることを期待します。
- 優れた男性ダンサーを知ること・まねぶ事
私はアンソニー・ダウウェル(元英国ロイヤルバレエ・プリンシパル)が優れたダンサーだときいています。日本人でも優れた同性ダンサーを知ることが大切です。男性は数が少ない分、続ければ残れますし、舞台に立てます。その分一度に多くの舞台を平行させたりして堕落の原因になることも多いです。本当に良質な本質をしっている舞踊家と出会い学ぶことが必要です。
- 1度は都心のチケット制のスタジオを体験してほしいこと
男性は地方のスタジオで同性の数が少ない中で続けていると世間知らずになるといいます。同性でもレヴェルが高いダンサーが多い都心のスタジオに通うことが必要です。
- 出会いを求めてダンスをはじめてもたかが知れていること
ダンスを学ぶことで女性との出会いが多いことから、女性目当てで舞踊界に入ってくる人も多いです。しかしそういった人はトラブルが多く、同様に接していてわかります。そしてそうして仮に出会いがあったにせよ、それはつまらない出会いでしょうし、ダンスそのものに対する冒涜のように思います。舞踊と向かい合う事はより深いことです。
- 指導者は女性が多いことから派生すること
- 指導者は女性が多いという事はご主人・パートナーの理解があってのことです。
指導者である女性が夜遅くまで仕事が出来るのはパートナーの理解があってのことです。都心のスタジオで夜11時前後までリハーサルや舞台があることはよくあります。そういったときに感謝をしなくてはならないのは、家計や生活をバックアップしているパートナーの存在です。故に仕事上の付き合いであってもパートナーを心配させることは絶対にしてはいけません。夜遅くまで仕事上の用件で食事をしたり、不用意に距離を近く取ることは指導者のみならずパートナーも心配させてしまいます。従ってすっきりさっぱり仕事をすることが重要です。
舞踊家のパートナーは舞台をめぐる資金繰りのみならず料理、洗濯といった身の回りの事のみならず、相手の靴まで磨いてやらなくてはいけないといいます。きちんとバックアップをすることが必要です。
- つかれているからといっても色目をつかったりしないこと。
指導者にとってトラブルは絶対に回避しなくてはいけません。そして男性の側から距離を近くとったり色目を使うことすら裏切りだと思います。相手を心配させないためにはきちんと距離をとって学ぶことが絶対です。その為には男性の方も普段からストレスをためないでリラックスして過ごしていることも必要です。
- 距離をとること、内面を話しすぎないこと
指導者が女性であることは距離をとることが必要です。学習に置いて必要なこと、自分の悩みごとなどを話していくうちに、自分でも意図しないうちに距離が近くなったりして相手を不安にさせてしまうことがあります。また悩みごと、内面を話すことは相手が異性であるが故に同性の言動と異なり深い共感を引き起こしてしまうことがあります。自分が頼ってしまったり・依存してしまったりする状況をつくるケースもあります。たとえ舞台や学習における悩みごとであっても、ほどほどにしておいて、深い部分・悩みごとは例えばカウンセラーを使うなどしたほうがよいです。指導者からもらう深い部分の会話は相互にインスピレーションが強すぎると男性が知らず知らずのうちにそういう状況をつくり結果として悲惨なトラブルを引き起こします。相互にインスピレーションを与えあうことはすばらしいことです。それをうまく生かしていくことが大切です。特にメールは内面が出がちなので注意をすることが必要です。
- 上記に書いたような理由で自分が傷つかないこと
男性がダンスを習うとこのような状況を生み出さないようにするために指導者である女性の側から距離をとることがあります。偏見の目も男性側が信頼を失うことが多いので当然あります。いわゆる小さな狭いお教室でもこういうことはおきるので、誰が入ってくるかわからないオープンクラスはなおさら距離をとられます。そして信頼が成立するまで時間がかかります。信頼が成立するまで時間がかかる、壊れやすいという状況がどうしてもあるので、男性の側は「自分は違うんだ」「解ってもらいたい」ということを思うこともあります。純粋に学びたい人ほどそれが出ると思います。しかしそれがゆえに相手と距離を近づけたり、内面を深くうちあけてはいけないと思います。アーティスティックなインスピレーションやトレーニングの励みと内面は違うと思います。ましてや相手を疑ってはいけません。女性が多いなかでダンスを学ぶことでいろいろ気にしたりつらい思いをすることも多いと思います。しかし自分が傷つかないようにすること・相手を信頼することが大切です。
- 「なれあい」を防ぐこと
実演家の間では「なれあい」といわれる事ですが、お互いにインスピレーションを与え合うことからなれあいになってしまうことは良くない事です。技術や芸術性の向上の為にも大切な事です。
- 女性の側からの絶対に誘惑にのらないこと
(ある先輩からいわれた経験則です。)
仕事上の情報がほしい・人を紹介してほしいという事も重なり場合によっては向うから食事などに誘われることがあります。しかしいかなる理由があろうともどのように些細なものでも誘惑にはのってはいけません。これはダンスに限らずその他の世界でもそうです。
痛い思い・過去から身につけるよりきちんと前もって知っておいてください。
どんなになってもいかなる状況にあろうとも自分自身のみならずシーンに対する信頼と貢献の為にクリーンな人間関係を持つことが必要です。むしろ相手を正すぐらいのものがないといけません。
あとからどのような誤解を引き起こすかもしれませんし、トラブルの元です。隙があると自分が踏み込んではいけない世界に身を踏み込む事にもなりかねません。結果としてよいものを導く、優れた結果を導くことはこのようなことが重要です。
- ダンスはその人のすべてがでる芸術です。
ダンサーは俳優であるといったことがいわれます。振りを覚えたりからだをつくるのみではなく、雰囲気をつくったり内面をつくったりする必要があります。そして生活や内面の雰囲気も滲み出ます。美しさについてアーティストとしての自覚について考える必要もあります。あるダンサーは水商売の雰囲気を出したくないため、ナイトパブやレストランのアルバイトとという業界の悪い因習とは絶対に関わらなかったといいます。男性舞踊手であることは、単なるナルシズムでも自由人でも特権でもありません。自らの生を見つめながらダンスと向かい合う作業です。
しかしこれだけのことをしっていけばタフな世界ですが、すばらしい世界です。本当に女性からも尊敬されるような素敵な男性の舞踊家、Dance Loverになってください。
Never Stop Moving