ダンスに関する学術的な情報収集のためのリンクリスト
オンライン上のマテリアルに対してみんなが利用できる情報をまとめようと思いリンクリストを作り出しました。実際には情報のスピードやサイトの数に対応しきれていません。自分でこれらのページから探してみるのも方法です。
●国内におけるダンスに関する学術的な情報収集のためのリンクリスト
●国外におけるダンスに関する学術的な情報収集のためのリンクリスト
戦略的合意形成・戦略的創造科学推進
舞踊学は超域領域です。多くの領域の研究者、アーティストをコーディネートすることで、戦略的合意形成、戦略的創造科学推進を行うことが出来ます。
戦略的創造科学推進
国立舞踊学校(仮)・国際舞踊大学(仮)を巡って
新国立劇場のバレエ研修コースの設立などついに国立の舞踊学校・舞踊研究環境ができる機運も少しづつ高まっています。もともとは文学・美学でも低く位置づけられていた舞踊も、舞踊学という科学が誕生してから50年前後で大きくその存在意義が変わろうとしています。日本においては東京芸大の邦楽の中に日本舞踊のコースがあり、東京芸大に舞踊学科ができるのが早いのではないかといわれています。近未来にどのような形式で実現するかはわかりませんが、そんな情報も少しづつ考える素材として準備していこうと思います。
舞踊とその周辺領域に関連した研究成果
近年「舞踊」は文部科学省の「文理融合」に適した研究素材として注目をされています。また様々な領域外から共同研究が持ち込まれてようとしています。舞踊の内部にいる人の意識や考え方・研究対象は変わらない中、外部から研究が持ち込まれる状況が生まれています。このことは舞踊という領域内部にいる人々の意識の変化と舞踊という領域の外部にいた人の意識の変化の両方を必要としています。ここではそんな研究を紹介していきます。
正しいからだの知識に関する情報収集のために
管理人が知っている限りの情報です。ここからリンクをしているだけでもいろんな方のページに情報があるので、そちらも参考にしてください。
*連絡先は記事や書籍に出ているものか、webpageにあるメイルアドレスを参考にしてください。
*エアロビクスやウェイトトレーニングは外側の筋肉をつくる有酸素運動といいます。エアロビクスという概念は通常スポーツクラブで我々が目にするジャズダンスや体操ないしはそれに類する運動ではなく、有酸素運動を意味するそうです。ダンサーにとって大切な筋肉は内側の筋肉です。(もっとも大切な筋肉は解剖学では大腰筋:PSOAS(英語)といいます。)これをつくるためにこれらのメソッドは役に立ちます。解剖学やピラーティスは無酸素運動といわれるそうです。有酸素運動と比較して大きな動きではない無酸素運動は通常我々が考えている運動とは違うものかもしれません。しかし多くの人々が怪我することなくからだをつくることを楽しむためにこれらの運動が広がってくれることを管理人は祈っています。
この2つ以外にもフロア・バレエ、パ・オーラ・ソル他いろいろなメソッドがあります。指導者の情報も体験情報もきりがないので、他のページや雑誌を参考にしてください。
*ジャズダンスやモダンダンスを知るために実はバレエの理解が裏表の関係でが必要だといいます。しかしバレエの理解の仕方ですら、「形から動きを模倣する」ことで進んでしまい、「頭をつかってからだを知り・理解」することが行われていません。腰が高くからだが柔らかい西欧人は日本の武道からアレクサンダー・テクニックやコンタクト・インプロヴィゼーションのきっかけをみつけていますが、日本人は日本人のからだの理解をした上で洋舞や身体文化の発達につながるきっかけを自分達で見つけられるような身体文化・からだへの理解の成熟が必要です。(日舞は伝統芸能ですがこの点は発達しています。)「頭をつかって考え・からだを知る」ことが指導者にとっても学生にとっても必要です。そのためになんらかの貢献ができればと考えています。戦後の日本の学校ダンスは「自分で考える」ということをイデオロギーにすることで発達し「創作ダンス」という形態で女子体育のなかで必修にまでなりました。しかし現在ではその理念が形骸化し歴史的背景が薄れることから「クリエイティブ・ダンス」という形に名前を変えたりして指導者の間での模索が続いています。学校の中にしろ外にしろ自ら自発的に「頭を使ってからだを考え・からだを知る」ことが大切だと考え、そのための貢献になればと考えています。
*日本では海外からもたらされたメソッドが紹介されている課程で本質が理解されなく広まっていくこともあるといいます。そのような状態にもなんらかの貢献が出来ればと思います。
*私個人はエアロビクスのような音楽や形から入る運動だけでは、「からだを動かしている」とは考えていません。確かにそういう運動が学校体育のみならずスポーツクラブでも多いです。けれどもそうではない運動を考えることも重要だと考えています。それは姿勢やからだの軸、重心や呼吸を考えて、最初はきれいでなくてもいいから、後から結果としていい動きを作り出すことです。形のまねのみではない、本当に上達をすることを目標にした運動が広がっていくことは、「プロにならないからやらない・自分には向かない」「単なるリフレッシュのための発散」からさらに1次元上の運動を考えることになると思います。都市生活を通じて、誰もが自分のからだを知り、大切にケアし、生きることを愛することが大切ではないか、そんなことを考えています。
*ダンスを「科学」(サイエンス)として考えることは意義を持ちます。科学とは「過去に行われた研究を基に自分で新しい何かを付加する事」です。アレクサンダー・テクニックをはじめ多くの技法が日本に輸入されましたが、ダンスを科学として考える視座があれば単に輸入するだけではなく、国内の指導者同志の発見の共有や国外の大本の方法論への貢献になる思います。
[ダンス(洋舞)という領域外との接点]
ダンス(洋舞)では舞踊家が肉体を駆使するため早くからボディ・アライメントのような試みが生れてきました。しかし能楽、歌舞伎、日舞といった日本の舞踊、邦楽の実演家、お笑いの世界では今だ実演家の身体に関する活動が少ないです。ここではこのような活動にチャレンジするページにもリンクをしていきます。
[国外の機関]
「芸能と身体-芸能実演家のカラダをサポートするカリキュラムの在り方-」,社団法人日本芸能実演家団体協議会,2003(平成14年度文化庁新世紀アーツプラン21 芸術団体人材育成事業)から上のリンク集は引用しました。
舞踊家が身を守るための制度
ここでは舞踊家が身を守るための制度を紹介します。
保険制度
舞踊家・舞踊研究者にとってのデジタル時代の著作権・知的所有権について
社会の情報化と伴いデジタルが標準の時代となった現在、舞踊家と舞踊研究者にとって著作権が大きな問題になることは簡単に予期できます。例えば舞踊家の動きであるmotion captureされたデータはこれまで著作権の対象になりませんでした。しかしゲームや映画で多くの舞踊家の動きが取り込まれていくことは簡単に予期できます。そこで、舞踊家・舞踊研究者にとって著作権・知的所有権の重要性を広く訴える次第です。
また日本の社会では舞踊教育の指導者の間でエクスサイズの商標登録ができません。お互いに似たことをやっている事が多い指導者にとって、それぞれのメソッドが盗まれることを防ぐなんらの自助努力は必要です。
余談ですがラバン・ノーテーションで有名なルドルフ・フォン・ラバンの最大の功績は「著作権・知的所有権をダンスに持ち込んだということ」であるということがラバン研究者の間の国際会議で決まったという話があります。インターネット上の取引・課金形態にたいして、エレクトリック・コマースやマイクロペイメントといった議論がしきりに行われています。誰も平等で誰もがこれらのことについて必要となったときに考えることができること・考える事ができ問題解決できる環境が重要です。
参考にできるページ
ダンスと政策-現実社会における問題解決の為に-
- 「芸術文化基本法(仮称)」問題
- 「芸術文化基本法(仮称)」問題の為のメーリングリスト(福井恵子さん)
芸団協では、20年来このテーマで議論と研究を積み重ねてきた成果と、その間に培ってきたネットワークで、舞台芸術家の地位の向上だとか、国民すべてが文化を享受する権利といった内容を盛り込むべく、討論会を行ったりパンフレットを発行したり、要望を出したりしていましたが、開かれた議論の場をつくり、情報の伝達を早めるため、「基本法」のメーリングリストを開設しました。
経緯、与党案本文や、メーリングリストの入り口等があります。
演劇分野の方は議論好きが多く、舞踊分野の方は短い現役生命をダンスに捧げてあまり議論に加わらないという印象がありますが、会議の場へは忙しくて参加できずとも、こうした場をご活用下さると嬉しいです。ダンスの生きる法制づくりに参加して、それが出来たらできるだけ利用して、ダンスを活かす社会になるといいな、と思います。”基本法”はあくまで理念で、個別の課題はその先に検討を続けなければならないのです。
- スターダンサーズバレエ団の猪俣陽子さんは朝日新聞に「芸術にも公的雇用を」と投稿し掲載されました。
送った内容をHPのメッセージボードに掲載しましたところ、いくつかの意見がでています。
舞踊研究者の為の助成金リスト
国際交流基金
文化庁在外研修
人文社会系大学非常勤講師が、1人で申請できる研究助成金一覧
左古輝人さんが人文社会系大学非常勤講師が、1人で申請できる研究助成金一覧を公開した(2003-11)。まだ情報はわずかだが貴重な取り組みだ。未掲載の情報をご存知の方はぜひ左古さんに連絡して欲しい。
人文社会系大学非常勤講師が、1人で申請できる研究助成金一覧
ダンス・ダンス研究におけるグローバル・ガバナンス
「言語」「民族」「国家」「宗教」「文化/文明」を乗りこえる新しい世界のガヴァナンスが必要となっていることを感じています。インターネットを支える超国家NPOであるICANNはインターネット上の共有資源を運営・管理するためにすでにこのような問題にリアルに直面をしている機関の1例としてあげることができます。そこでは前述の「言語」「宗教」といったこれまでのキーワードではない新しいコミュニュケーションとコミュニュケーション基盤とそのガヴァナンスの為のルールが共に必要とされています。管理人もこのリストに限らず実際に様々な作業をしていてこのキーワードの必要性を感じています。ここではこのようなトピックにあてはまる事例を紹介していきたく思います。
ダンスと標準化
「Dance and Technologies」といったトピックが活性化してくるにつれて、アプリケーションやモーション・キャプチャーのようなテクノロジーなどがどんどん発達してくると思われます。国際規模で様々な規格が提案されてその標準化が必要とされています。コンソーシアムのような産学共同プロジェクト、ユーザーや全ての舞踊家・舞踊研究者に対して開かれた技術開発・立案体制が必要になります。このリンク集ではそういうものを扱おうと思っています。
ダンスとビジネス
ITビジネス、ベンチャー・ビジネスなどダンスに関するビジネス、そのビジネスモデル、必要とされているものについてリンクで紹介していきます。
公演を調べるために
無数にある公演を調べる・予約するに便利なサイトをリンクしていきます。
FAQ
ダンスとテクノロジー(日本国内での動き)
- Laban Editor
中村美奈子さんが開発をしているソフトウェアです。モーションキャプチャデータとラバンノーテーションデータのフィルタリングが可能です。(中村さんのホームページを参照してください。)
- バレエの振付シミュレーション・システム「Pas Editor ver2.1」(曽我麻佐子さん)
WindowsPCで、VRMLプラグインを入手すれば、InternetExploreで実行できます。
プロ・ダンサーの実演から採取したモーション・キャプチャ・データを利用して,クラシック・バレエの振付をWeb上で対話的に創作し,3次元CGアニメーションでシミュレーションできるシステムを開発した.ユーザにはバレエ教師を想定し,利用目的には,基本ステップの組み合わせをレッスン用に短時間で多数創作することを想定した.バレエ教師などによってシステムの評価を行ったところ,実際に使うことのできるレッスン用の振付が本システムで創作できることが確認された.同時に,実用的なシステムとして公開するために改良すべき点が明らかになった.
公開されているシラバス・授業(中継も含む)
MITのプロジェクト、OpenCourseWare、は今後10年間ほとんどの授業のシラバスと内容を無料で公開するというプロジェクトです。発展途上の国々に貢献することがmissonの1つにあがっています。ここのリンクでは日本でダンスに関する情報をシラバス・授業の公開という形式で公開しているコンテンツを網羅しようと考えています。現在大学は民営化を通じた研究・教育の評価基準の変化/実学に近く産業になる研究が生き残りやすくなる事/情報化に伴う資源の無料公開などで大きくその姿が変わろうとしています。日本の教育現場に求められる重大な課題と同時に「大学」という場の変容、世界に開かれたグローバル・ガバナンスの影響など様々な問題に実際に答えていく必要があります。
(敬称略)
- 鈴木晶さん:バレエ・舞踊学
法政大学で行っている講義のシラバスや授業中継がみることが可能です。
- 水村(久埜)真由美さん:解剖学・動作学・運動生理学・運動学・など
水村さんが担当されている様々な授業の情報が出ています。
ダンスとロボット
ダンスとロボットという問題領域が近年メディアの中で取り上げられることが多いです。ロボットデザイナーの松井龍哉さんは「シルヴィ・ギエムのような動きをするロボットを開発したい」と述べており、動きの美しさを表す概念「フォーヴ」(form+move)を美学の中に提起すべきだと述べています。
舞踊家や指導者が「動き」について考えることは、情報学やエンターテイメント、ソフトウェアの中でも「ダンスとテクノロジー」という問題系として近年取り扱われてきてます。しかし近年もう1つのベクトルとしてダンスとロボットという対照的なハードウェアの世界ともいうべき領域も生まれてきています。
ヒューマノイド(人型ロボット)のみならず、アンドロイドのような人とそっくりなロボット、そしてバイオテクノロジーやクローニング、とロボットが組み合わされた人造人間ともいうべき存在が開発されることも未来にあるでしょう。本当に人型ロボットが日常的な存在となり、人間の生活を助けてくれる一方で、社会の高度なオートメーション化から来る大量失業や成果物の戦争利用・犯罪への利用がSF映画のように起こると考えられます。バイオコンピュータの研究をされている松本元さんは実際にロボットの脳を開発することを研究として依頼をされ、ロボットに人の感情を持たせるべく「愛」の研究をはじめているといいます。
現在に舞踊学の理論を利用することから人とロボットの感性コミュニュケーションを探る研究がすでにスタートしています。人は人を取り囲む人工物における広義のエージェント(アニメの中のキャラクターからタマゴッチ、ロボットまで)とコミュニュケートする必要がでてきています。人とエージェントの共生・協調を探るのみではなく、ロボット同志の対戦も行われています。スポーツを素材にとった平和で非暴力的な対戦(ex. ロボカップなど)から、暴力的で破壊的な兵器としてのロボットを提示するような対戦(サヴァイヴァル・リサーチ・ラボラトリーから米軍のロボット兵器)まですでに多くの可能性・未来像が提起されてきています。
実際にプログラマーによってロボットの動きがプログラムされたり、人間の身体が解析されるということも行われています。一体本当にダンサーの持つ身体は「ある種特別な身体」、「人類の持つ身体像の極限」なのでしょうか?歴史的症候としてダンサーの身体が特殊であると位置づけられたり、プロスポーツにおけるドーピングのように身体が思想や目的から加工されてしまうということも背景にあったりします。
舞踊家の動きがロボットに取り込まれたり、プログラムされるプロトタイプになることも十二分に近未来ではありえます。舞踊家及びそれを取り巻く環境において「倫理」や「人間」、「身体」といったテーマと向かい合いながらこのような問題を考えていくことが必要です。
欧米ではソフトウェアやエンターテイメントの中での人の「動き」は研究されていますが、踊るロボットの研究は本家ともいうべき欧米でもほとんど研究されていません。日本がもっとも進んでいるといわれています。
OpenSourceなChoreography
ウィリアム・フォーサイスの「インプロヴィゼーション・テクノロジーズ」は近未来に多くのバレエ団・舞踊団がコレオグラフィーをオープンソースで公開するようになることを予期させるものでした。
オープンソースでコレオグラフィーを公開しているページにリンクをしていきます。
オンライン上のダンス・コンテンツに対する著作権・課金に関係がある団体・組織
Maxの現状(ドラフト版)(文書:常盤拓司 tt@soundarts.net)
Max系(注1)のリアルタイムで動作する音楽開発環境は,IRCAMで開発されたNeXT stepコンピュータに取り付けられたリアルタイム信号処理専用のボード(ISPW(IRCAM Signal Processing Workstation)のプログラミングと制御を目的に,Miller PucketteとDavid Zicarelliによって開発された.
このオリジナルはMax/ISPWと呼ばれ,現在使われることはほとんどない.しかし,このオリジナルを作り出した,3者(IRCAM,Miller Puckette, David Zicarelli)は現在,Max/ISPWのアイデアをそれぞれの形で発展させている.
(注1:Max/MSPと”ほぼ”同等のGUIとアイロニーに基づくものを本稿では一括してこう呼ぶ)
Max系の概要
Max系の環境では,通常のプログラム言語において関数として提供されるさまざまな機能がオブジェクトなどの名称で呼ばれる.オブジェクトはGUI的には入出力のソケットを持つ”箱”として,ディスプレイ上に図示される.オブジェクトは系によって大幅な違いはあるものの,おおむね,条件に基づく制御や,乱数生成,MIDI信号処理,音響信号処理,コンピュータの外部とのインターフェースの管理などの種類がある.
Max系の環境のプログラミングは,オブジェクトの入出力のソケットを互いに線で結ぶという作業によって実現される.この作業をパッチングと呼び,作られたプログラムは,パッチと呼ばれる.このような方法は2つのアイロニーに基づくものである.一つ目がプログラムを制作する際に作られる,処理の流れを記述した,フローチャート呼ばれるもの,もうひとつが,アナログのモジュラーシンセサイザーである.
Max開発の流れ
現在,Max系には3つの種類が存在している.
第1のものは,Max/ISPWの直系である.
最初,IRCAMにおいて実装されたMaxは,ハードウェアや開発環境の進歩に伴って,2度の脱皮を経て今日に至っている.
第1の脱皮は,Next Step+ISPWボードというハードウェアからSGIworkstationへの移行である.この移行によって,専用の高価で繊細な信号処理ハードウェアと移行当時すでに旧式かつ生産が終了してしまっていたworkstationから開放された.この移行の結果生まれたのがMax/FTS(FTS:Firster Than Sound)である.
第2の脱皮は,開発環境の移行である.Max/ISPWはC言語の拡張された方言の一種,Objective-Cという言語で開発されていた.しかし,SGIworkstationへの移行は,この言語から別の言語(この場合は,C言語とjava)への移行を可能とした.これは,UNIX特有の移植性の高さが移行によって獲得されたためである.その結果生まれたのが,jMaxである.jMaxはGUI部分がjavaで,音響処理を行う部分がC言語で実装されている.そして,特に重要な点であるが,この開発はオープンソースベースで行われている.これは,jMaxの仕組みのすべてが公開されているということであり,さまざまなjMaxの拡張が容易に行うことができ,なおかつ無償であるということである.
第2のものは,Max/MSPと呼ばれており,もっとも一般的で唯一の商用アプリケーションである.現在販売されいるものは,Macintosh版のみである.
Max/MSPは,MaxというリアルタイムMIDI制御プログラミング・コントロール環境と,MSPというMax上で動作する信号処理システムから構成されている.
Maxは,オリジナルのMax/ISPWの制御システムの部分,つまり,MIDIに関係する部分だけを取り出してMacintoshに移植したものである.この移植は,David ZicarelliがOpcode社で行った.そして,MSPはFTSの部分をMacintoshに移植したものである.
最後のものは,PureDataという名称である.PureData(略称:PD)は,先の2つとは異なり,まったくゼロから開発が行われた.つまり,完全なクローンである.PDは,オリジナルのもう一人の開発者Miller Puckette(正確にはMaxは彼のアイデアである)による実装で,もっとも多くのコンピュータ環境に移植されている(2003年1月の時点でWindowsOS,MaxOS10.2,Linux,BSD,IRIXでの動作が確認されている).Max/MSPがMacintosh版しかないため,Windowsユーザーの利用が多いのも特徴である.
現在のトレンド
第1のトレンドは,コンピュータグラフィックスである.このコンピュータグラフィックスには,2Dと3Dの二つの方向に分かれている.前者は,ビデオエフェクトなどと呼ばれており,リアルタイムに入力した画像の処理や,VJ的な表現が含まれる.後者は,いわゆるCGで,3次元の仮想空間上に物体がモデリングされる.どのMax系でもこの両方の拡張の方向が見られる.
第2のトレンドは,ネットワーク性である.現在,ネットワーク上を転送できるデータの量が著しく増加している.その結果,複数のコンピュータを協調させて作業をさせたり,コンピュータごとに役割分担をさせるということが可能となっている.また,遠隔地の音をリアルタイムに受信し作品に利用することも可能となっている.
第3のトレンドは,舞踊などの動作を,カメラや装着型センサーなどを用いて,抽出し,音楽を身体動作でコントロールするというアイデアである.すでに先進的な取り組みとして行われている.
今後の流れ
すでにMax/MSPのWindowsへの移植とその移植版の公開スケジュールがアナウンスされるなど,今後,プラットフォーム依存性は薄れていくことに,そして相当な勢いでの普及が予想される.このようなソフトウェアを用いると日曜NOISE Musicianになるということはそれほど難しいことではない(しかしそれが優れた作品を増加させるという保障はない).また,オープンソースという考え方が普及していくことから,jMaxなどもさらに普及することになると考えられる.
- Max/MSP
- PD
- jMax
- ハードウェア(インターフェース用の電圧->MIDIコンバーター)
[謝辞]
この部分を書き起こしてくださったサウンド・アーティストの常盤拓司さんに深く感謝をします。